研究概要 |
1)冠動脈バイパス術後に発生する心房細動は血行動態を悪化させ回復を遅れさせる.低侵襲手術MIDCAB, OPCABでは従来の人工心肺使用し,心筋保護液で心停止下に行う従来の方法と異なる機序が予想された.我々の施設のMIDCAB138例,OPCAB129例の計267例では59例(22.1%)に心房細動を認めた.そこで年齢,性別,手術時期,バイパス部位,完全血行再建,左室駆出率(35%未満),Ca拮抗剤,β遮断剤,利尿剤,糖尿病,高血圧,腎不全,術式,左主幹部病変,右病変のどの危険因子が関与したかをSPSSロジステック多変量解析で検討した.その結果,心房細動の発生頻度が有意に高かったのは術前の糖尿病の合併(CR4.844,95%CI2.3569.958,P=0.00),腎不全の合併(CR2.845,95%CI1.1766.884,P=0.02)と右冠動脈へのバイパス(CR3.540,95%CI1.02012.279,P=0.046)であった.高い傾向にあったのは,左室駆出率の低下と術前Ca拮抗剤投与のみであった.2)術中電気生理学手法を用い心房細動の機序の解明を試みた.細動波の周期長に注目し周波数解析を行い最大パワー部位よりリエントリー,異所性中枢の関与を検討するため装置を開発した.しかし術中心房細動の発生は無く,洞調律時に肺静脈,大静脈,心房筋にトリガーとなりうる異常電位は捕らえられなかった.3)ホルター心電図波形からQRS波をサプトラクションし心房細動波のみにし周波長を分析する方法を見出し,細動の停止様式について検討しえた.
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