研究分担者 |
瀧 俊彦 (財)田附興風会医学研究所, 第5研究部, 主幹 (60135605)
三宅 正幸 (財)田附興風会医学研究所, 第5研究部, 部長 (90250076)
光富 徹哉 愛知県立癌センター, 胸部外科, 部長 (70209807)
金井 陸行 (財)田附興風会, 医学研究所・第2研究部, 研究員 (00322652)
|
研究概要 |
癌転移を抑制するという目的で,我々は細胞運動抑制モノクローナル抗体を作製してきた.これらの中で,MH7-5およびMH8-11は同じエピトープを認識しており,およそ150kDaの糖蛋白であるということが判明した.この遺伝子をクローニングしたところ,2904個のopen reading flameを持つ遺伝子で,これは既にGenBankに登録されており,Aminopeptidase-N(APN)であった.これの性格を検討するために,マウスのメラノーマの低転移株であるF1にトランスフェクションしたところ,F1-APN細胞は高率に肺転移をきたした.また,ヌードマウスに移植したところ,母細胞のF1よりも高率に移植可能であり,増殖能も高まることが判明した.驚くべき事に,F1-APN腫瘍においては,高頻度に血管新生が見られ,APNは血管新生をも促進している可能性がでできた.そこで我々は,Human Umbilical Vein Endothelial Cell(HUVEC)を用い,抗APN抗体MH8-11による影響を検討した.HUVECは本来APNを細胞膜に持っており,このMH8-11抗体によりtube formationが抑制されることが判明した.そこで実際の臨床材料での相関を見るために114例の大腸癌症例で検討してみたところ、3年生存率において陽性例が80.8%であるのに対し、陰性例は95.6%と有意に(P=0.023)陽性例の予後が不良であることが判明した。また、無病率で検討してみたところ、陽性例は39.8%であるのに対し、陰性例では78.1%と、やはり有意に(P=0.014)陽性例の予後が不良であることがより鮮明に判明した。膵癌でも50例において検討したところ、中間生存期間で比較すると陽性例が9.5ヶ月であるのに対し、陰性例が13.2ヶ月と有意に陽性例のほうが不良であることが判明した。
|