研究概要 |
PETA3/CD151はTransmembrane 4 superfamily(TM4SF)に属している.これまで我々が研究してきたMRP-1/CD9,KAI1/CD82が転移抑制遺伝子としての働きを持つのに対してPETA3/CD151は細胞運動を抑制し,正反対の機能を示した.そこで我々はマウスのメラノーマの低転移株であるF1にこのcDNAをトランスフェクションしてその機能を検討した.その結果,F1-PETA3/CD151はやはり高運動能を示し,in vivoでスキッドマウスを用いた転移実験を行ったところ,尾静脈からの注入により高率に肺転移を起こした.生存期間においても有意にPETA3/CD151発現F1細胞移植群は対照群に比べて短命に終わった.また,フットパッドに移植し,自然転移を検討したところ,やはり対象群が殆ど転移を起こさないのに対して,殆どのマウスが肺転移を形成した.このように,PETA3/CD151は肺転移促進遺伝子であることが明らかになった.また,抗PETA3/CD151抗体を用いて肺転移を抑制できるかどうか行ったところ,有意に自然転移は抑制された.これは肺転移の抑制という臨床応用に利用できるものと考えられる.そこで実際の臨床外科材料を用い、PETA3/CD151の発現と癌患者の予後との関係を分析した.その結果,肺癌患者145例で,半定量PCR,免疫組織染色を用い検討したところ,生存率はCD151陽性例が51.9%であるのに対し,陰性例では73.1%と陽性例が有意に(p=0.013)予後が悪いことが判明した.また,大腸癌においても146例で検討したところ,3年生存率で陽性例が78.5%であるのに対し,陰性例では94.3%と,やはり有意に(P=0.012)予後が陽性例で悪いことが判明した.
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