研究概要 |
ラットの血管内皮細胞および腫瘍細胞(C6)を単層培養し,多重標識組織放射能測定法で各トレーサの速度定数を算出して増殖能および糖代謝を評価した.培養液中の血管内皮増殖因子(VEGF)の濃度を0.5〜25ng/mlまで変化させ,VEGF無添加群(対照群)と比較すると血管内皮細胞の増殖能および糖代謝はVEGF濃度の増加に伴い亢進した.培養液中の血管新生阻害剤(TNP470)の濃度を10ng/mlから5μ9/mlまで変化させ,対照群と比較するとTNP470濃度の増加に伴い,血管内皮細胞の増殖能および糖代謝は低下したが,腫瘍細胞(C6)では血管内皮細胞と比較してTNP470による抑制効果が少なかった.培養実験系で用いた腫瘍細胞(C6)をラットの右大脳基底核に定位的に注入接種して脳腫瘍モデルを作成し,TNP470単独および抗腫瘍薬(ACNU)との併用投与を行い,^<14>C-メチオニン(Met)によるオトラジオグラフィー法で解析した.関心領域は腫瘍部(T)と対側灰白質(NT)に設定してT/NTを算出した.TNP単独投与群ではMet集積量(T/NT)は対照群(2.27±0.22)と比較して有意に低下し(1.55),腫瘍体積は対照群の47%に抑制され半数例に壊死巣がみられた.併用群ではACNU先行投与群の腫瘍体積が対照群の30%と最小であり,全例に壊死巣が確認され,Met集積も有意に低下して(1.53),治療効果が最大であった.TNP治療後にACNU投与を併用した群では腫瘍体積およびMetの集積量はTNP単独投与群と比較して同程度であった. 今回の検討では抗腫瘍薬を先行投与し血管新生阻害剤を併用するプロトコールの治療効果が最大であり,tumor dormancy therapyとして抗血管新生・化学併用療法は有望と考えられた.
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