研究課題/領域番号 |
12470292
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
脳神経外科学
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
前田 信治 愛媛大学, 医学部, 教授 (50036464)
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研究分担者 |
鈴木 洋司 愛媛大学, 医学部, 助手 (20226567)
立石 憲彦 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教授 (90236555)
田中 潤也 愛媛大学, 医学部, 教授 (70217040)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
11,100千円 (直接経費: 11,100千円)
2002年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2001年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2000年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | 微小循環 / 酸素輸送 / 赤血球レオロジー / 人工微小流路 / 脳血流 / 神経組織 / 誘発電位 / 画像処理 / 酸素放出 / 赤血球集合 / 重力 / 血流量 / 微小血管 / 脳循環 / トリグリセリド / 腸間膜微小血管網 / 赤血球 / 酸素飽和度 |
研究概要 |
循環器系の失調による脳の機能障害、特に脳虚血状態、に関連して、血流状態ならびに血液のレオロジー的性質の変化の両面から、脳への酸素供給ならびに神経細胞の局在機能への影響について微小循環レベルでの総合的かつ基礎的な研究を行った。 (1)総頸動脈ならびに上腸間膜動脈の血流量は心拍動に同期して変化し、その血流量が変化すると、微小血管領域の赤血球流速も比例的に変化した。総頸動脈による脳への血流には左右代償性の変化が見られ、一側の血流量が減少すると、他側が増加した。末梢組織の酸素分圧、血液の酸素飽和度、血流量の間に密接な関係が認められた。 (2)酸素透過性のある人工微小流路を用いた基礎実験で、赤血球流速、赤血球量、赤血球変形能、赤血球の形態変化、赤血球流の圧縮、高分子物質による赤血球集合と酸素放出との関係を明らかにした。特に、単一の赤血球が膨潤したり、赤血球同士が集団で、あるいは密着して流れるときには、赤血球内部あるいは集合体内部から外部への酸素の拡散距離が増大し、酸素放出が抑制されることが示された。 (3)末梢組織における赤血球の酸素化・脱酸素化過程においてpHや炭酸ガス分圧の変化が赤血球の形態変化を介して赤血球集合に影響することが示された。代謝活動の活発な組織では、赤血球は球形化傾向を示し、赤血球集合を抑制して酸素供給を促すことを明らかにした。 (4)日常生活と関連して、高脂肪食を摂取すると、一過性に血漿中のトリグリセリド濃度が上昇し、赤血球集合が促進されることがわかった。現象が一過性であっても、生体内では循環障害が起こっており、動脈硬化発症への危険性が示唆された。 (5)大脳皮質領域ならびに腸間膜の微小血管網に対して顕微鏡下に反射照明法と透過照明法によって画像処理法を駆使して赤血球の循環状態(赤血球濃度)と酸素放出状態(赤血球の酸素飽和度)の二次元画像化に成功した。さらに、単一の微小血管についても血管断面における赤血球の流動分布状態と酸素飽和度の変化を定量的に画像表現できた。 (6)人工微小流路と生体の微小血管で行われた実験結果の相違点を総括した。微小血管では、人工微小流路に比べて、循環状態の変化に対して赤血球の流動挙動の変化が顕著に発現し、管の弾力性、したがって生体では血管の硬化性病変、が重要な要因であることが示された。 (7)脳への赤血球の循環動態(総頸動脈の血流)が変化したとき、脳組織への酸素供給状態が変化し、これにともなって誘発電位(知覚領)の発生状況によって解析された大脳皮質の電気活動は抑制された。 (8)脳の機能維持機構を各種機能調節物質と関連させて遺伝子から分子レベルで検討した。特に、神経細胞とマイクログリアの液性調節因子による相互機能調節について有益な情報が得られた。 以上、微小血管網の血流ならびに赤血球の流動状態は、血管自身の弾力性や幾何学的変化だけでなく、血液のレオロジー的性質によっても変化し、脳組織への酸素供給状態、ひいては脳の機能に大きな影響を与えることが明らかとなった。
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