研究概要 |
脳腫瘍の化学療法における選択的効果増強を図るために,クロロエチールニトロソウレア系制癌剤(CENU)抵抗性が予想されるO^6-methylguanine-DNA methyltransferase(MGMT)酵素が多いMer+腫瘍に対して,阻害剤でMGMT活性を特異的に阻害してCENU作用の増強をin vivoで検討した.MGMT活性阻害剤グアニン誘導体O^6-fluorobenzylguanineはACNU併用で45%〜75%抑制した. ヒト脳腫瘍の手術による摘出材料や生検材料について,MGMTの多寡によるMer+/Mer-診断法を検討した.脳腫瘍摘出標本において抗MGMT抗体による免疫染色法の定量標準化を試み,MGMT陽性細胞は1例を除いて陽性細胞が検出され,最高陽性率は66.7%で,平均は19.7%であった.Mer-腫瘍に相当する陽性率10%未満の腫瘍は10例(24%)に認められた. オリゴデンドログリオーマ14例について,loss of heterozygosity(LOH)をFISH法で検討したところ,オリゴデンドログリオーマでは1pおよび19p欠失が高率であることが判明した. 抗癌剤の作用機序および腫瘍の遣伝子診断など多面的分子機序解析は各脳腫瘍の抗癌剤感受性を明らかにし,脳腫瘍に対する化学療法の治療成績向上に寄与するものと考えられた.
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