配分額 *注記 |
5,300千円 (直接経費: 5,300千円)
2002年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2001年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2000年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
|
研究概要 |
本研究の主目的は,脳動脈(特にヒト主幹脳動脈並びに細動脈)の平滑筋弛緩機構におけるポタシウムチャネル(K^+ channel)とサイクリックヌクレオチドの役割を解明することである.研究開始時期以来の社会的背景変化より,剖検症例からの摘出臓器の取り扱いが厳格に規制される状況となった.当施設の倫理委員会においても早期の承認を得ることが困難となったため,既に承認が得られている獨協獨協医科大学法医学教室との共同研究を途中より開始した.従って,研究期間前半は,動物(ウサギ)の脳動脈を用いた実験を行った.一酸化窒素(NO)ドナーであるニトログリセリン(NG)は,ウサギ脳底動脈リング標本を用量依存性に弛緩させ,また平滑筋細胞内のサイクリックGMP(cGMP)濃度を上昇させる.この弛緩反応はcGMP合成阻害薬(ODQ)の前処置によりほぼ完全に消失し,Ca^<2+>-activated K^+ channel inhibitorであるcharybdotoxin(CTX)の存在下で有意に抑制される.さらにcGMPの合成アナログである8-bromo-cGMPや,内因性のcGMP濃度を上昇させるphoshodiesterase inhibitor(zaprinast)に対する弛緩反応もCTXにより抑制される.一方,末梢の細脳動脈を用いた潅流実験では,NOに対する弛緩反応はCTX存在下で主幹脳動脈より強く抑制される傾向がある.また,NOに対する細動脈の弛緩反応は,cGMP,合成阻害薬の存在下でも完全には抑制されず,この残存する反応はCTXの追加処置でさらに抑制される.以上の結果より,ウサギ脳動脈におけるNOの弛緩作用はcGMP依存性であり,その作用の一部にCa^<2+>-activated K^+ channelの活性化が関与していること,さらにこのK^+ channelの活性化は主幹脳動脈と比較して細動脈においてより重要な役割を占めることが結論される.また,細動脈においては,NOの弛緩作用にcGMPに依存しないK^+ channelの活性化が関与する可能性が示唆される.クモ膜下出血後の合併症である脳血管攣縮の一起因物質と考えられているoxyhemoglobinの前処置は,主幹動脈におけるNOの弛緩作用に含まれるK^+ channel活性化の関与を増幅するが,この現象は細脳動脈においては明瞭ではない.一方,これまでに行ったヒト脳動脈を用いた同様の実験結果から,主幹脳動脈(脳底動脈・中大脳動脈本幹)におけるNOの弛緩作用はcGMPに依存すること,さらに部分的にCa^<2+>-activated K^+ channelの活性化を介することが明らかになりつつある.一方,ヒトの細脳動脈(穿通動脈レベル)に関する検討を現在推進中であるが,実験データが標本採取までの死後経過時間などの影響を受けやすく,現時点では再現性・信頼性の高い結論を得るには至っていない.
|