研究概要 |
本研究では,アクリジンオレンジ(acridine orange : AO)と光線や放射線、電磁場、超音波などの体外エネルギー波の照射によって生じる強力な殺腫瘍細胞効果を利用した骨軟部肉腫の新治療戦略の開発を目的とした。研究内容は,1)マウス骨肉腫に対するAOの光線力学的、放射線力学的治療法の効果.2)培養マウス骨肉腫細胞に対するAOと超音波およびパルス電磁場刺激の殺細胞効果の検討.3)体外エネルギー波とAOの相互作用と殺細胞効果のメカニズムの解明である.実験材料にはin vitroではマウス骨肉腫細胞株,in vivoではそれをマウスの皮下に移植し実験モデルとして使用した.その結果,骨肉腫の掻爬後にAOによる遺残腫瘍の可視化を行い再掻爬を施行し,さらに光線力学的治療法を併用する事で無治療群と比較して統計学的有意に再発率を押さえることが可能であった.またAOを用いた放射線力学的治療法でも5Gyの放射線照射で抗腫瘍効果,再発率抑制効果および生命予後改善効果を認めた.しかし,励起に電磁波,超音波を用いた実験では殺細胞効果は認められなかった.光線および放射線力学的治療法での細胞動態学的変化をDNA顕微蛍光測光法を用いて検討した結果、いずれも24時間後にG2 arrestが生じ、その後,多倍体化して最終的に細胞死が生じていることも判明した。また,活性酸素抑制試験の結果、この光線および放射線力学的治療法の殺細胞効果のメカニズムに一重項酸素が関与していることが判明した。このアクリジンオレンジは生細胞内ではDNAには結合しないで主にRNAとライソゾームに結合し,細胞分裂を阻害し、増殖を抑制するととも判明した.以上の結果から光線および放射線力学的治療法は,骨肉腫治療の切除縁縮小と治療適応範囲の拡大を可能とする全く新しい治療法となると考える.
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