研究概要 |
p19^<ARF>(ヒトではp14^<ARF>)はp53の分解を促進的するMDM2に結合し,機能を阻害するためp53遺伝子が正常の場合でもp14^<ARF>に異常があればp53は機能を発現できない.本研究では泌尿器科癌でのp14^<ARF>の遺伝子異常の有無とその意義について研究を行った. 1.膀胱癌細胞株についてのp14^<ARF>mRNAの発現の検討 T24およびHT1376では発現を認めたが,RT4では認められず,homozygous deletion(HD)によると思われた. 2.腎細胞癌細胞株についてのp14^<ARF>mRNAの発現の検討 ACHN, KRC/YではmRNAの発現を見たが,他の細胞株では発現は見られなかった. 3.腎細胞癌細胞株についての定量的PCR 定量的PCRにより,Exon1beta, Exon2の各領域について5組のプライマーで検討したとろ,3株でHDが示唆された. 4.腎細胞癌切除検体での免疫組織学的検討. 3種類の,抗p14^<ARF>抗体を用いた検討で,腎細胞癌にはp14^<ARF>の発現は見られなかった. 5.腎細胞癌切除検体のDNAによる検討. 定量的PCRにより34例中8例がHDとおもわれ,これら症例では,臨床的にも予後不良であった. 6.腎細胞癌細胞株p14^<ARF>発現のrestoration 発現ベクターpBabepuroにp14^<ARF>をクローニングし,p14^<ARF>欠失細胞株に導入したが,いずれの細胞株でもp14^<ARF>のstable transfectantはえられず,Caki-1にのみ,p14^<ARF>のmRNA陽性クローンがえられた.しかし,蛋白レベルでの発現はみられなかった.以上,P53の遺伝子異常が認められない腎細胞癌においてはp14^<ARF>の遺伝子,あるいは転写以降の遺伝子制御の異常が癌細胞の一層の生物学的悪性度獲得に寄与しているものと思われた.
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