研究概要 |
本研究では,申請者らがクローニングしたhTERTのプロモーター領域(1375bP)を利用して,遺伝子治療の基礎的検討を行った.平成12年度においては,プロモーターのマッピングや活性調節因子の解析などを行った.10種類のdeletion mutantを用いて,各種細胞株におけるプロモーター活性をLuciferase assay法を用いて解析した.その結果,転写開始点から378bp上流までの領域は,コントロールとして用いたSV40プロモーターの約80%の活性を示した.次にこの活性領域の脱メチル化を行い,抑制されていたp16やE-cadherinの発現がメチレーションの関与を受けていることを確認した.さらにPCR-based methylation assayにて,脱メチル化による発現であることを証明した.自殺遺伝子治療に用いられるCD遺伝子を378bpプロモーター下流につなぎ,各種ヒト癌細胞株を用いてin vitro実験を行った結果,コントロールとして用いた正常上皮細胞や線維芽細胞では殺細胞効果は認められなかったが、癌細胞株では泌尿器癌だけでなく婦人科癌においても高い殺細胞効果が認められた.さらなる活性増強を目的に、現在この378bpプロモーターをタンデムリピートし,同様の手法で検討中である.平成13年度においては,in vivoでの治療実験を行うため378bPプロモーター+CDをアデノウィルスベクタに組み入れた.予備実験として,ex vivoでアデノウィルスによりCD遺伝子を導入した前立腺癌細胞を、SCIDマウスに同所移植後5FCを腹腔内投与した.その結果明かな腫瘍縮少効果が認められた.今後このアデノウィルスベクターをマウス尾静脈から投与し,in vivoでの治療実験を行う予定であるが,上記実験から明かなように,hTERTプロモーターは幅広い癌腫で活性を示すと考えられ,高い抗腫瘍効果が各種癌種で得られるものと期待している.
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