研究概要 |
角膜上皮欠損が遷延化すると実質の浮腫,融解などにより角膜の混濁が生じる。従って臨床的には,角膜上皮欠損を可及的速やかに修復することが極めて重要である。多くの遷延生角膜上皮欠損の症例では,角膜知覚が低下している例が多い。このような神経麻痺生角膜症の治療法として,知覚神経伝達物質であるsubstance PとIGF-1が相乗的に角膜上皮の創傷治癒を促進することを明らかにした。本研究では,1)substance PとIGF-1による角膜上皮伸長促進作用には,protein kinase C, tyrosine kinase, phosphoinositol 3-kinaseおよびp38 mitogen-activated protein kinaseが関与していることが明らかとなった。2)角膜上皮の移動には,small GTP-binding proteinであるRhoが必要であることが明らかとなった。3)角膜上皮の修復には,上皮細胞基底膜を構成するタンパク質の内特にlamininと協調して細胞間の接着装置の発現が調節され治得ることが明らかとなった。4)角膜実質細胞と多核白血球の共存でコラーゲン分解が促進され,この反応にはIL-1が、関与していることが明らかとなった。5)サイトカイン(TNF-aおよびIL-13)により角膜実質細胞からケモカインが産生され細胞の浸潤に関係することが明らかとなった。6)角膜上皮細胞をsubstance PとIGF-1で刺激すると多くの遺伝子の発現が変動することが明らかとなったが,それらの遺伝子の解析は今後の課題である。
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