研究概要 |
ティッシュコンディショナーは,義歯床下粘膜の調整,機能印象,即時義歯および顎補綴栓塞子の暫間裏装などに頻用されているが,経時的に劣化すること,さらに,微生物が容易に付着したまま比較的長期間使用されることから,義歯性口内炎や誤嚥性肺炎の感染源になることが指摘されている。そこで,この問題の解決のために,ティッシュコンディショナーに抗菌性を付与することに着想し,抗菌剤として持続的な抗菌性と防臭性を兼ね備えた無機系抗菌剤である銀ゼオライトの応用を試みた。 試作抗菌性ティッシュコンディショナーを蒸留水またはヒト唾液に7および28日間の長期間浸漬後,37℃湿潤下にて菌液を24時間まで作用させた後,生菌数(CFU)を算定した。その結果,対象菌である誤嚥性肺炎および義歯性口内炎起因菌の5菌のうち,P. aeruginosaに対してのみ抗菌効果が認められなかった。そこで,ティッシュコンディショナーに付着するヒト唾液中の有機成分の除去を試みたところ,P. aeruginosaのCFUは0となった。これらのことより,長期間唾液に浸漬した場合,抗菌効果を示さなかった原因に唾液中の有機成分が関与し,この有機成分を除去することにより,誤嚥性肺炎および義歯性口内炎の起因菌に対して,抗菌効果が発揮される可能性が示唆された。 以上の結果から,ヒト唾液により処理した銀ゼオライト添加ティッシュコンディショナーの抗菌効果は,菌種により異なることが明らかとなり,その原因としてティッシュコンディショナーに付着する唾液中の有機成分が関与している可能性が示唆された。以上のことから,新しい抗菌性ティッシュコンディショナーの臨床応用に際して有益な知見を得ることができた。
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