研究概要 |
本研究の目的は,口腔扁平上皮癌(SCC)の発生・浸潤・転移に関与する遺伝子異常を解析し,その結果をSCCの診断に応用し,SCCの治療成績の向上を意図するものである.まず,SCCにおけるヘテロ接合性の消失(LOH)やマイクロサテライト不安定性(MSI)について検討した.その結果,XPA, XPB, XPC, XPD, XPE, XPF, XPG, CSB, p53,FHIT, APC, BRCA1,BRCA2,DCC等のローカスや3p14.1-12,3p21.1-14.2,3p21.2-14.2,3p24.1,3p25,8p21.1-11.2,9p22,9q32-33等の領域にLOHやMSIの様々な発現パターンが認められた.さらに,SCCの治療成績に関与する新しい三つの分子についても検討した.その一つは,最近シスプラチン耐性に関与していることが報告されているATP7Bである.SCCにおいて検討した70症例中39症例(56%)においてATP7Bの発現を認め,ATP7B陽性例のシスプラチンを用いた癌化学療法の奏効率は,陰性例に比較し有意に低下し,しかも,患者の治療成績もATP7B陽性例が,陰性例に比較し有意に不良であることが明らかとなった.もう一つの分子は,UPaseである.UPase発現陽性症例は72症例中56症例(77.8%)に認められ,陽性例の所属リンパ節への転移率は,陰性例に比較し有意に高く,Upase陽性例の治療成績も陰性例に比較し有意に不良であった.三つ目はPin1であるが,我々は,SCCの細胞株でのPin1のmRNAの発現を確認し,さらに,SCCの組織切片上でのPin1の発現がcyclin D1を相関することを確認した.
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