研究概要 |
ケテンはヘテロクムレンの一つであり,極めて高い反応性をもっている.著者らは1,3-ジオキシン-4-オン類を加熱すると定量的にケテン体を生成することを見い出している.本研究ではこの手法でケテンを生成させ,これを合成化学的に利用する研究を行った. 1.一連の2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキシン-4-オン体を合成し,これらをリパーゼ触媒下,酢酸ビニルを用いたトランスエステル化反応に付し,光学活性な2-ヒドロキシメチルジオキシノン体を合成した.次いで,ヒドロキシメチル基に不飽和カルボン酸を縮合させて得られる不飽和エステルを分子内光2+2付加反応に付し,シクロブタノール体の位置,立体およびエナンチオ制御合成を達成した. 2.ビスアシルケテンの分子内4+2付加反応により,二つのメチル基がポリメチレンで架橋されたデヒドロ酢酸誘導体を合成した.これをアンモニアおよびメチルアミンと加熱して2,6-架橋ピリジン誘導体を合成する方法を見い出した.本法は分子認識化学で重要なピリジノファン体の合成法として優れている. 3.前記2の手法を用いて,ピリジノファン型12-crown-4の初めての合成に成功した.すなわち,市販の3,6,9-trioxaundecanedioic acidにMeldrum酸を縮合させてbis(acylated Meldrum's acid)を合成した.これを沸騰クロロベンゼン中加熱すると生成するビスアシルケテンが分子内で4+2付加反応を行い,デヒドロ酢酸の二つのメチル基がジエチレングリコール単位で架橋されたヘテロファンが一挙に合成できた.これをアンモニアと加熱し,ピリジノファン型12-crown-4の合成に成功した.
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