研究課題
基盤研究(B)
我々はORCのADP結合に関し、フィルター結合アッセイ法を確立しその生化学的性質を解析した。その結果、Orc5pは、ATP同様(Orc5pとATPとのKd値は約10nM)、高い親和性でADPと結合すること(Orc5pとADPとのKd値は約10nM)を見出した。一方、Orc1pは、ATPとは異なり(Orc1pとADPとのKd値は約10nM)、ADPとは結合出来なかった。ORCに対するATP結合はorigin DNAによって促進されたのに対し、ADP結合はorigin DNAによって影響を受けなかった。さらに、ATP存在下、ORCはorigin DNAと特異的に結合するのに対し、ADP存在下では結合出来ないことが分かった。従ってADP結合型ORCは、複製開始因子として不活性であることが分かった。以上全ての結果は、DnaA同様、ORCの活性制御に関しても、ADP結合が重要な役割を果たしていることを示唆している。我々はATPと結合できないOrc5pを発現している変異株(ORC5-A)を構築し、それが温度感受性の増殖を示すことを発見した。さらに我々はORCのサブユニットの一つであるOrc4pを多量発現すると、ORC5-Aの温度感受性が抑圧されることを発見した。この抑圧はOrc4p特異的であり、他のサブユニットでは見られなかった。ORC5-Aの培養温度を高温にシフトした後、クロマチンに結合しているORC、及び結合していないORCをイムノブロット法で解析したところ、温度シフト後速やかにORCが分解していることが分かった。この分解はOrc4pを多量発現することによりある程度抑制された。この結果は、Orc5pに対するATP結合がORCを安定化させていること、特にOrc5pとOrc4pとの結合に重要であることを示唆している。
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