研究概要 |
平成12年度は,spectralkaryotyping(SKY)法をさらに進展させ,新しい染色体カラーバンディング法としてspectralcolorbanding(SCAN)法を開発することに成功した。SCAN法によって,特定の染色体についてGバンドに一致したバンド単位におのおの異なった色調で識別することが可能となる。この方法において,バンド由来の判定を完全に自動化することは困難であったが,その可能性は示せた。 平成13年度は,さまざまな染色体異常の解析にSCAN法を適用して,有用であるかどうかを評価し,以下の結果を得た。なお,今回開発した方法によって,予想以上の高精度で染色体異常が解析できた。このため,当初の目的の一部であったテロメア単位で染色体由来を解析する研究は,途中で全面的にバンド単位での解析の研究を行うことに切り替えた。 1.凝縮した染色体やGバンドの質が悪い染色体標本でも,400バンドレベルに相当する明瞭なカラー分染像が得られ,安定した精度で染色体解析が可能である。 2.SKY法は染色体単位でしか異常の由来を同定できないという制限があったが,SCAN法によって1バンドに相当する短い染色体断片でもバンド由来を同定することができた。 3.SKY法は染色体ペインティングプローブを用いている性質上,異なる染色体間の転座の検出には偉力を発揮するが,同一染色体の内部での構造異常(逆位,重複など)は色調の変化としてとらえることができなかった。しかし,SCAN法によって重複を検出することができた。 4.複雑な構造異常の場合は,Gバンド法でもSKY法でも切断点を決定することは困難である。SCAN法により,複雑な染色体転座でも切断点を精確に決定することが可能である。 SCAN法により,上述の2〜4のようなGバンド法やSKY法の限界や欠点が補完され,一段と精度の高い染色体解析が可能であることが示された。
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