研究概要 |
近年のネットワーク技術の発展に伴い,有線および無線通信技術を利用した広帯域のコンピュータネットワークが急速に普及しつつある.このようなネットワーク環境において,サーバからクライアントへの広い帯域幅を利用して多種のデータを繰り返し放送することで,クライアントにデータを提供するデータ配送方式が注目されている.この方式では,通信のための帯域競合が起こらないため,クライアント数が非常に多い分散システムにおいても高いデータアクセスのスループットが得られる.しかし,要求するデータの放送時間まで待たなければならないため,一般に応答時間が長くなる.また,放送される大量のデータから,自分の欲しいデータを効率的に見つけることは容易ではない. 本研究では,最近注目されているデータ放送型の情報システムを想定して,データアクセスの応答時間の短縮を目的とする研究開発を推進した.一般に,放送されるデータ項目間には,複数のデータ項目をまとめてアクセスすることが多いといったように,相関性が存在することが多い.そこで,データ項目間の相関性を考慮して,放送サーバにおける放送プログラムのスケジューリング手法,および,クライアントにおけるデータ項目のキャッシング手法を考案した.また,放送データがビデオ映像や音声データなどの連続メディアデータである場合を想定して,クライアントが放送データを途切れることなく,かつ,短い応答時間で受信することが可能な放送データのスケジューリング方式を考案した. 次に,クライアントにおいて,データ受信時に必要なデータのみを効率的にフィルタリングするための数学的基盤として,フィルタリングの関数的性質や,関数間の関係について考察を行った.さらに,フィルタリングを効率よく実行するためのシステム基盤として,ルールに基づいて受信データの取捨選択や加工を行うアクティブデータベースシステムを開発した. 最終的には,以上のような研究成果を統合し実システム上に実現して,十分な運用評価を行うことが目的であったが,残念ながらそこまでには至らなかった.しかし,本研究で得られた個々の研究成果は,将来のディジタル放送環境において膨大な量の放送データを効率的に送受信するための核技術となりうることを確信する.
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