研究概要 |
火山ガラスは水和するとその屈折率が上がるということが知られている.本研究では,火山ガラスの屈折率の変化,すなわち水和の程度からシラス斜面表層部の風化の定量的評価をすることを試みた. 鹿児島市西部の小野町にあるシラス採土場の斜面では,少なくともI層〜VI層の6層の地質単元が肉眼で識別できた.I層は,入戸火砕流堆積物の非溶結部.II層・III層・IV層は,古期崖錐堆積物.V層は,桜島サツマ軽石.VI層は,新期崖錐堆積物である. 火山ガラスの屈折率は,一般に知られているAT火山灰のそれよりやや低く,平均で1層が1.4976,II層が1.4979,III層が1.4982,IV層が1.4981であった.測定誤差ぎりぎりではあるが,I層からII層へ屈折率の平均値がやや上昇しているようにみえる. 加熱脱水(150℃で48時間)させると,すべての試料で屈折率の低下が認められた.このことから,新鮮そうに見えるI層でも水和が進行していることがわかる.I層の2φ程度の軽石粒を粉砕したものを測定すると,低屈折率側に明らかにレーンジが広がったが,II層では変化がなかった. これはII層に含まれる2φ程度の軽石粒は,内部まで完全に水和が完了していることを示すものと考えられる.これらのことから,I層からII層への屈折率の平均値の上昇は,火山ガラスの水和の進行,すなわち風化の進行を示しているものと考えられる 今回の研究によって,I層とII層の境界は,貫入硬度値,帯磁率,屈折率のいずれの測定でも明瞭な境を持っていることが明らかとなり,火山ガラスの屈折率変化がシラス斜面の風化・劣化を評価する指標の一つとなることが確かめられた.今後は,これらの指標を組み合わせてシラス斜面の定量的な風化・劣化の評価法を確立し,シラス斜面崩壊のハザードマップを作る必要がある.
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