研究課題/領域番号 |
12480156
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
環境影響評価(含放射線生物学)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丹羽 太貫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80093293)
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研究分担者 |
加藤 友久 京都大学, 放射線生物研究センター, 助教授 (50301247)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
16,200千円 (直接経費: 16,200千円)
2001年度: 7,500千円 (直接経費: 7,500千円)
2000年度: 8,700千円 (直接経費: 8,700千円)
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キーワード | 放射線 / ゲノム不安定性 / 非標的突然変異 / 遅延突然変異 / pink-eyed unstableアレール / ミニサテライト / ゲノムクロストーク / p53依存性Sチェックポイント / マウス初期胚 / DNA合成抑制 / 色素上皮細胞 / pink-eyed unstabel allele / p53-遺伝子 |
研究概要 |
放射線が突然変異誘発作用の機構とし、放射線によるDNA損傷が突然変異として固定されるという直接的な作用機構が考えられてきた。しかし最近になり放射線は遺伝的不安定性を誘発し、これが突然変異を誘発するという間接的機構の存在が明らかになってきた。われわれのこれまでの研究から、遺伝的不安定性により誘導される生殖細胞突然変異や体細胞突然変異の存在を示してきた。Lかしながら、放射線による遺伝的不安定性の誘発の分子機構はほとんど明かではない。 本研究では、放射線で誘発される遺伝的不安定性の2つの特徴である非標的突然変と遅延突然変異について、照射精子から生まれた次世代マウスでの雌親由来遺伝子における突然変異を解析した。照射精子受精で生まれた次世代マウスでの母親由来のpc-1'ミニサテライト配列の突然変異頻度は、精子への放射線量に応じて上昇した。さらに次世代マウスの網膜色素細胞において母親由来のpink-eyed unstableアレールの復帰突然変異を見たところ、精子への放射線量に応じてその頻度の上昇が観察された。これは精子が受精卵に持ち込んだDNA損傷が発生期の多くの細胞分裂を経ても突然変異を誘発させ続けることを意味している。すなわち放射線によるDNA損傷で誘導されたゲノム不安定性は、長期にわたって非標的突然変と遅延突然変異を誘発する。 これらの結果はまた、DNA損傷によって精子ゲノムと卵子ゲノムの間でゲノムクロストークの機構が存在することを意味している。このゲノムクロストークを解析するため、照射精子受精卵とそれから発生する胚について、p53依存性シグナル伝達機構を解析した。受精卵の雌性核へ注入したp53応答性lacZレポーターは、精子への照射によって発現が誘発される。また照射精子受精卵では、p53依存性Sチェックポイントの存在が明らかになった。このp53依存性SチェックポイントによりDNA合成が抑制を受けた受精卵でDNA量が2Nに満たない卵も正常に分裂し、着床期まで発生してその後に排除される。 以上、本研究を通じて、1)放射線がゲノム不安定性を誘発し、これが非標的・遅延突然変異を誘発すること、およびマウス受精卵におけるp53依存性Sチェックポイントという新たなp53の機能が明かになった。
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