研究概要 |
新規な耐熱性コラーゲン分解酵素の生産菌の分類学的位置づけを明らかにし,本菌が,Alicyclobacillus属の新種であるものと結論した.本菌の培養液上清から、各種のカラムクロマトグラフィーにより分子量約46kDaの単量体の耐熱性コラーゲン分解酵素を均一状態に精製した.この酵素は、コラーゲンやゼラチン(コラーゲンの熱変性物)に高い特異性を示し、また反応の至適pHは酸性領域(pH3.9)にあった。亜鉛依存性のコラゲナーゼの反応最適pHは7-9にあり、また本酵素がEDTAなどのキレート剤で阻害されないことを考慮すると、本酵素はコラーゲンに高い特異性をもつ酸性プロテアーゼの一種であると考えられた。しかしながら本酵素は、酸性プロテアーゼの特異的阻害剤であるペプスタチンやジアゾアセチル-DL-ノルロイシンメチルエステルによって阻害されなかった。本酵素は高い耐熱性をもち、市販されているコラゲナーゼはどれも熱に不安定であるのに対して、本酵素は60℃,pH4.0で4時間の熱処理後も80%の残存活性を保持していた。 この耐熱性コラーゲン分解酵素の部分アミノ酸配列を決定し,この配列情報をもとに本菌のゲノムDNAから本酵素遺伝子の一部をPCRで増幅し,コロニーハイブリダイゼーションによって目的遺伝子を単離した.本酵素の推定アミノ酸配列は,近年報告されている数種のペプスタチン非感受性酸性プロテアーゼのアミノ酸配列と相同性を示した.触媒残基と推定されるアミノ酸残基周辺の配列EXXLDならびにGTSは,本コラーゲン分解酵素についても保存されていた.よって本酵素もこれらと同様のファミリーに属すると考えられた. また,難分解性有機質のひとつである脂質を低温で分解しうる酵素生産菌,Acinetobacter sp.No.6株を分離し,その脂質分解活性について解析した.
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