研究分担者 |
土谷 岳令 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (20227432)
清家 泰 島根大学, 総合理工学部, 助教授 (30243421)
高安 克己 島根大学, 汽水域研究センター, 教授 (00127490)
矢部 徹 国立環境研究所, 生物圏環境部, 研究員 (50300851)
林 建二郎 防衛大学校, 建設環境工学科, 助教授
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配分額 *注記 |
10,700千円 (直接経費: 10,700千円)
2002年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2001年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2000年度: 6,100千円 (直接経費: 6,100千円)
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研究概要 |
汽水域における水生絶滅危惧植物の保全と修復を図ることを目的に,各種水生植物の生活史ならびに酵素多型分析による繁殖形態の解明を,汽水の湖である中海とそれに注ぐ大橋川で行った.調査を行った水系に生育していた汽水性の絶滅危惧植物は,カワツルモ,イトクズモ,リュウノヒゲモ,オオクグ,ツツイトモ,コアマモ,フシナシシャジクモであった.これらのうち,今回特に重点的に調査を行った植物は,汽水性の海草コアマモ(Zostera japonica Aschers. et Graebn.)と汽水性の湿生植物オオクグ(Carex rugulosa Kukenth)であった.コアマモは光要求性が強く,透明度の水深よりも浅い場所でのみ生育し,水温が15℃から20℃の間となる春季と秋季に最もよい成長を示すことがわかった.また,塩分に対しては広適応的であった.酵素多型分析の結果,コアマモは,種子繁殖と地下茎伸長による栄養繁殖のうち,狭い範囲では栄養繁殖が主な増殖手段となっていることが示唆された.コアマモの消波効果についての実験結果から,シュート当たりの消波効果は小さいものの,単位面積当たりの密度が高いため,コアマモには消波効果が期待できることが明らかとなった.オオクグに関しては,種子の発芽は群落内部では観察されず,人為的に刈り取った場所でのみ観察された.実生の生残率は低く,新加入シュートはすべて地下茎由来であった.オオクグは多量の種子を生産しているにも関わらず,個体群は主に栄養繁殖で維持されていると考えられた.成長解析モデルの適用により,ヨシによって群落が被陰された場合には,日射量の制限を受けてオオクグ群落の形成状態に大きな変化が起きることが予測された.今後は,両植物の種子の動態,ならびにコアマモの定着に及ぼす底質の影響について重点的に調査を継続する予定である.
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