研究課題
基盤研究(B)
本研究は、脳解析のモデル系であるキイロショウジョウバエの、脳全体の詳細な神経回路図を作成する長期計画の基盤となる最初の期間として、脳の感覚情報の入力処理部に注目し、細胞の網羅的な同定を目指した。3939のGAL4エンハンサートラップ系統について、固定・染色なしに細胞の形態を観察できるGFPの遺伝子をUASにつなげたレポーターを持つ系統を各GAL4系統と掛け合わせ、幼虫と成虫の脳を解剖して取り出して共焦点蛍光顕微鏡で観察記録した。これによって、各系統の蝸変態期の前と後での発現パターンを比較できるようになった。この画像をサーバーに蓄積して、任意のコンピューターから自由に閲覧できるシステムを構築した。これらの画像を比較検討してスクリーニングした結果、視覚系、嗅覚系および聴覚系の神経回路を多数固定することができたが、特に視覚系感覚回路に関して重点的な解析を行い、低次感覚野から脳本体に到る情報伝達経路を、従来知られていた12経路を大幅に上回る44経路を同定した。これらの投射パターンを詳しく同定するために、従来大まかにしか区切られていなかった脳の内部を10個の区画に分ける座標系を確立した。それを用いて低次視覚中枢のlobulaと呼ばれる領域から脳本体への投射14経路、約500細胞を詳しく解析した。うち8経路約490細胞は、低次視覚中枢において視野の狭い範囲に相当する部分のみにコラム状に投射する神経が数十〜百数十個ずつ来になった構造をしており、残り6経路9細胞は、視野全体に接線状に投射する神経が1〜4個ずつ存在する構造を取っていた。ラベルされた神経においてシナプス小池の局在を特異的に可視化して、その分布を解析した結果、前者のコラム状神経はすべて、出力シナプスが高次中枢側にある数心性経路だったのに対し、後者の接線状神経では約半数が、出力シナプスが低次中枢側にある遠心性経路であった。
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