研究概要 |
1 ラット第4脳室の脈絡叢を取り出して、同じ系統のラット脊髄(C2)後索に移植した。脈絡叢上衣細胞は基底膜から離れ、微絨毛を失う傾向にあった。そのようなう上衣細胞の表面に沿って無数の再生軸索が伸びた。また、CGRP線維が移植片に入っていることが確かめられた。 移植8ヶ月後にHRPを坐骨神経から注入して、経神経節的に脊髄後索からの再生軸索を標識すると、再生軸索が損傷部に良く伸びていることが明らかであった。しかし、それより先の宿主組織に入る再生軸索は少なかった。生理学的に、損傷部より5mm頭側で、実験群では明らかな誘発電位が記録されたが、対照では記録されなかった。 2 培養系で脈絡叢上衣細胞の神経突起伸長作用を調べた。培養脊髄後根神経節ニューロンを、上衣細胞との共培養、アストロサイトとの共培養、ラミニン上での培養の3者で比較して、上衣細胞との共培養で神経突起の伸長が有意に促進された。一つの指標として、例えばニューロン当たりの総ての神経突起の全長は、258±14、385±15、565±12μm(ラミニン上の培養、アストロサイトとの共培養、脈絡叢上衣細胞との共培養の順序)であった。 3 また、海馬由来のニューロンでも同じ様に脈絡叢上衣細胞との共培養で明らかに神経突起の伸長が促進された。つまり、末梢神経および中枢神経いずれの由来ニューロンについても突起の伸長が促進された。 4 上衣細胞にはNCAM, N-cadherin, lamininの接着因子、NT-4, GDNF, bFGF, IGF-1, IGF-2の栄養因子が産生されているkとが明かとなった。 5 in situ hybridizationによって、transthyretin, phosphodiesterase 1α, gelsolin, phopholipid transfer protein, apolipoprotein E, ATP-binding cassette transporter A8, androgen-inducible aldehyde reductase, Na/sulfate cotransporter SUT-1, FS88の遺伝子が脈絡叢上衣細胞に発現されていることが明かとなった。 6 培養上衣細胞を培養して、再びマウス脊髄に移植すると、移植細胞の約5〜7%程度で、アストロサイトへの分化が見られた。これは脈絡叢上衣細胞が幹細胞の性質を持っていることを示している。
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