研究分担者 |
伊藤 豊志雄 東京大学, 実験動物中央研究所, 室長(研究職) (20106644)
中山 裕之 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (40155891)
平山 和宏 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (60208858)
小林 喜美男 東京大学, 実験動物中央研究所, 室長(研究職) (20205454)
大西 保行 東京大学, 実験動物中央研究所, 室長(研究職) (70201382)
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研究概要 |
何故rasH2マウスがDMH誘発大腸癌に高感受性である理由については不明である。そこで、rasH2マウスが何故DMH誘発大腸癌に高感受性であるかを検討するために、発生した腫瘍について発癌関連の遺伝子変異、遺伝子発現量を調べ、rasH2マウスと対照マウスのnon-Tgマウスで発生した腫瘍での遺伝子発現量を比較した。その結果、腫瘍組織において、p53やH-ras遺伝子の変異はみられず、今回の発癌の過程では主因ではないことが示唆された。既に、K-rasや導入したヒトc-Ha-ras遺伝子にも変異がみられなかった。導入したヒトc-Ha-ras遺伝子の発現量はrasH2マウスの腫瘍部で亢進しており、また癌関連遺伝子の発現についてGene Navigator^<TM> cDNA Array System (TOYOBO)を用いて検索したところ、rasH2マウス、non-Tgマウスにおいて腫瘍部と非腫瘍部で差のみられた遺伝子、MMP7,Clusterin, nm23,c-jun, SLC, Bad, Bax, Gelsolin, Ran, SkpI p19について発現量をRT-PCRで確認したところ、MMP7,Clusterin遺伝子において、rasH2マウス、non-Tgマウスともに腫瘍部での遺伝子発現が非腫瘍部と比較して高かった。これらの遺伝子を含めて腫瘍部で発現が亢進している遺伝子や抑制されている遺伝子群に関して、rasH2マウスとnon-Tgマウスで類似した結果が得られた。さらに、rasH2マウスとnon-TgマウスにおいてDMHで誘発される大腸癌は、腺癌であり、両群マウスに差がみられないことも報告されている。つまり、DMHによるrasH2マウスの大腸癌は、non-Tgマウスのそれと同様の組織学的、分子的性状を示すことからその発生過程は同様と思われ、導入遺伝子c-Ha-rasの過剰発現が、その発生頻度、発育速度の亢進に関与することが示唆された。
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