研究概要 |
本研究では川床堆積物(stream sediments)を試料とした。これは小さな沢ごとにその出口で川砂を集め、それがその集水域の地表の化学組成を表すと考えるわけである。現場で180μm(80メッシュ)の篩を通し、細かい粒子だけを集める。川床堆積物の代表性は、チタンなど重鉱物の存在度に依存する元素のばらつきがもっとも大きく50%程にもなるが、地域による変化よりはるかに小さい。 分析は、大学共同利用研究で日本原子力研究所JRR4気送管を使った中性子放射化分析により、As, Se, Br, Sb, Sc, Co, La, Ce, Sm, Eu, Tb, Yb, Lu, Re, Os, Ir, Au, Th, Uを、蛍光X線分析により、Si, Ti, Al, Fe, Mg, Ca, Mn, Na, K, Pを定量した。中性子放射化分析は100mgの試料をポリエチレン封入/気送管5分照射の条件下で中4日の冷却後、名古屋大学RIセンターへの郵送した。測定は、サンプルチェンジャーを装着したγ線計測解析システムを用いた。測定は順調で、3月4日までに実試料106カプセルの照謝/浸淀を終えた。蛍光X線分析は約950試料の測定を終えた。共同研究者によって開発された図化/解析プログラムを用いた解析をすすめた。 1、自然界のバックグラウンドとしての地質との関連:花崗岩の露出する地域にAl, Ca, Na, Srが多く、堆積岩(第三紀)の分布する地域にFe, Co, Cr, Ni, Vが多いこと、TiとCeの存在度力高い相関を示すが、Spheneの存在によると思われる。 2、鉱物と元素存在度の関係:基盤岩および河川堆積物中の主要構成鉱物中の微量元素を比較した。その結果、黒雲母は相対的にMg, Fe, Mn, Ti, Co, VおよびZnに富み、基盤地質による河川堆積物中の元素組成の違いは黒雲母/長石比の寄与が大きいことがわかった。 3、金の鉱化作用に関係した元素:金の鉱化作用に関係した元素の挙動を調べるため、津具鉱山周辺地域を検討した結果、金、ヒ素、アンチモン、亜鉛、セシウムが金の異常値を囲むようにハローを形成していることがわかった。金の産出は報告されていないが、とくに大峠に異常が際立っている。
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