研究概要 |
直線状のオリゴマーであるperfluoro-p-quinquephenylからoctiphenyl(PF-5P,6P,7P,8P)の合成と評価を行った。これらの化合物は無色の固体で、有機溶媒に不溶である。DSCの測定ではガラス転移は観測されなかった。ITO基板上にTPTEをホール輸送層、Alq3を発光層、フッ化フェニレンを電子輸送層、LiFを電子注入層、アルミニウムを陰極として真空蒸着し、有機EL素子を作成した。これらの直線状のオリゴマーは、デンドリマーに比べはるかに優れた性能を示した。PF-6Pの誘導体では、最高輝度が10Vで19970cd/m^2に達した。PF-7PおよびPF-8Pの輝度-電圧、電流電圧曲線はPF-6Pのそれとほとんど同じであった。これは電子注入よりも電子移動が律速になっているためであると考えている。また、フッ素化ナフタレンのオリゴマーであるperfluoro-2,6-ternaphthaleneおよびquaternaphthalene(PF-3N,4N)を合成し、素子としての評価を行った。これらの性能は現在最もよく使用されているAlq3に匹敵した。 ベンゼン環の1,3,5位にオリゴパラフェニレン基をもつ全フッ素置換体の合成と評価を行った。ベンゼン環をそれぞれ10,13,16個もつPF-10Y, PF-13Y, PF-16Yは、DSC測定でガラス転移のみが観測され、安定なアモルファス固体であることがわかった。PF-10Yの電子移動度は10^<-4>cm^2/Vsであり、アモルファスn型半導体としてはかなり大きな値を示した。PF-13YおよびPF-16Yは、PF-10Yより優れた電子輸送性能をもつことがわかった。また、PF-10Yは最近注目されている燐光EL素子のホールおよびエキシトンブロック層として最も優れた材料である。現在これらの材料の実用化を企業との共同で進めている。
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