研究概要 |
小さなサンプル(1cc以下)のための小さな磁石が開発されたら,机上で手軽に使ったり,持ち運んで使用できる夢のMRマイクロスコープが実現する.このような磁石としては,永久磁石以外の選択はないと思われる.しかしながら,鉄ヨークを有する従来型の磁気回路方式によって製作された,ギャップ60mm,静磁場強度1Tの磁石は,Fe-Nd-B系の永久磁石材料を用いても,1トン以上の重量を有し,このような方式では,上記のような小型軽量磁石の実現は不可能であった.ところが,最近,ヨークを有しない永久磁石磁気回路が,住友特殊金属(株)において開発され,飛躍的な小型軽量化が可能となった(同一のギャップ,均一静磁場領域の比較で,従来比約1/7の軽量化).これによって,デスクトップ型のMRマイクロスコープの構築が可能と思われたが,最大の問題は,静磁場強度の温度によるドリフト(-1200ppm/deg)であった.本研究では,重量85kg,ギャップ41mm,均一領域13mm球(14ppm)で,静磁場強度が1テスラの永久磁石磁気回路を使用したので,重さ10トンで静磁場強度0.3Tの人体用磁石に比べ,(周囲の)温度変動のMR画像に対する影響は,ざっと言って300倍程度であると見積もられた.この問題に対して,当研究室では,時間分割内部NMRロックの手法を開発し,12時間程度の長期間にわたる高分解能(100ミクロン以下)の撮像が可能であることを実証した.以上のような技術開発によって,設置面積1平米以下,総重量170kg程度のデスクトップMRマイクロスコープの開発に世界で初めて成功した.
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