研究概要 |
A11熱可塑性複合材料は,両者の融点の差を利用し,強化形態を残し,繊維とマトリックスとの融着により,強い界面を創成しようとするものである.つまり,従来の熱可塑性複合材料,例えばガラス繊維強化熱可塑性複合材料等の界面構築とは大きく異なり,繊維/マトリックス間に強い界面相を形成させようとするものである. フィルムスタッキング法を用いて,一方向PE繊維強化PE同種異形態複合材料(一方向PE/PE複合材料)を作製した.一方向PE/PE複合材料の加熱加圧成形による作製においては,その成形温度が非常に重要な因子となってくる.そこで,力学的特性に影響を及ぼす因子として考えられる成形温度についての検討を行った.さらに,その特性の差異をDSCにより検討を行った.その結果成形温度により繊維/マトリックスの溶融状態が変化し,バルクの複合材料の力学的特性に影響をおよぼしていることが確認できた. また,フィルムスタッキング法を用いて,含浸性の異なる2種類の一方向PP/PP複合材料を成形し,トランスクリスタル層が引張特性に及ぼす影響について検討を行なった.繊維配向角度0°,90°方向および非主軸方向に切り出した試験片の引張試験を行なった結果,繊維配向角度0°および90°方向引張試験においては,含浸性を向上させることにより,引張弾性率はいずれの方向にも向上しており,特に90°方向の向上が著しかった.一方,非主軸方向引張試験においては,含浸性の良い複合材料の場合,引張弾性率がθ=45°〜60°で最小値を取るという挙動を示した.これらは,トランスクリスタル層の構造に起因していると考えられる.また,含浸性を向上させることにより,全ての角度において,引張強度は僅かに向上した.さらに含浸性を向上させれば,界面せん断強度を用いて最大仕事説で求めた理論値に近づくと考えられるが,トランスクリスタル層は強度を僅かに向上させる効果しかないことも明確となった.
|