研究分担者 |
加我 君孝 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80082238)
松本 潔 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (10282675)
畑村 洋太郎 工学院大学, 国際基礎工学科, 教授 (40010863)
中尾 政之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (90242007)
|
研究概要 |
本研究の目的は、聴覚神経系に障害をもつ患者のための感覚機能代替システムにおいて,その設計手法を確立することである.本研究の成果は,(1)ラットの聴皮質で聴覚性信号を計測する微小多点表面電極と、脳幹を電気刺激する微小剣山電極を開発し、それらを用いた脳幹インプラントシステムの動物モデルを構築したこと,(2)聴皮質上からの多点信号計測から聴皮質の機能構造を明らかにしたうえで,脳幹・蝸牛神経核の電気刺激が音の高さ・強さの知覚を誘発できる可能性が高いことを示したこと,(3)電極間の所望の神経を選択的に刺激できる多点ゲート刺激法を開発したことである. 表面電極は、皮質上から高空間分解能に聴覚性信号を多点計測する。同電極では、曲率があり脈動している脳表面に電極基板が密着できるように、柔らかいポリイミド・フィルムを基板に用いた。基板上には2mm角の計測部位に80μm角の計測点を70個配した。微小剣山電極は、1.3mm角の計測部位に400μm間隔で格子状に、16個の微小タングステン電極を有する。 純音で誘発された聴皮質反応を表面電極で多点計測し,聴皮質の機能構造を考察した.同反応は,異なる音の周波数・音圧に対し,特徴的な時空間的活動パターンを示した.さらに,剣山電極を用いて,脳幹・蝸牛神経核を電気刺激したところ,音刺激で誘発された反応と同じ特徴を示し,蝸牛神経核の適当な部位を適当な電流強度で刺激すれば,音の高さと強さの情報を適切に知覚させられる可能性を示した. 多点ゲート刺激法が,電極形状によらず所望の神経を選択的に刺激できることを,シミュレーションと動物実験で示した.多点ゲート刺激法では,陰極の刺激で電極周辺の神経を幅広く発火させ,不必要な活動電位の伝播を陽極の刺激で抑制する.
|