研究概要 |
本研究は,先端型ごみ焼却プラント用の高耐食性熱交換器材料の開発を目的として行ったものである。先端型ごみ焼却プラントの排ガス環境で耐え得る材料としてはNi基合金に限られるため,ベース金属である純Niとその基本組成であるNi-Cr二元合金さらにはこの合金に第三元素としてMo, Siを添加した三元合金を試料として作製した。これら試料の排ガス模擬環境での高温腐食挙動を調べ,高耐食性を有するNi基合金の化学組成を明らかにした。得られた結果は以下とおりである。 1.Na_2SO_4-NaCl-KCl溶融塩が塗布されることにより純Ni, Ni-Cr合金なびにNi-Cr-(Si, Mo)合金の酸化増量が著しく増大した。 2.1173Kの高温において酸素雰囲気中への微量HClの添加は,溶融塩付着下でNiの酸化を抑制したが,Ni-10mass%Cr合金の酸化を促進した。Ni-20mass%Cr合金の耐食性はガス組成によって変化しなかった。 3.Na_2SO_4-NaCl-KCl溶融塩塗布下においては,酸素雰囲気,塩化水素を含む酸素雰囲気,塩化水素ならびに水蒸気を含む酸素雰囲気とも,NiへのCrの添加は酸化増量を低下させた。とくにNi-20mass%Cr合金の酸化増量は小さかった。この場合,Ni-20mass%Cr合金上には連続的かつ級密なCr_2O_3スケールの生成が認められた。 4.Na_2SO_4-NaCl-KCl溶融塩付着下,塩化水素を含む酸素雰囲気では,Ni-10mass%Cr合金へのSiならびにMoの添加は合金の酸化増量を低下させた.この場合,スケールの内層に級密なCr_2O_3層の生成が認められた. 以上のことから,先端型ごみ焼却プラント排ガス環境下における高耐食性熱交換器材料として,Ni-高Cr二元系合金あるいはNi-Cr-(Mo, Si)三元系合金が有望であることが明らかになった。
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