研究概要 |
本研究は,大変形後の弾性係数やスプリングバック特性を高精度に計測評価するために,レーザー干渉測長計を導入して塑性変形に伴う弾性係数の変化を精密に測定するシステムを開発した.弾性変形領域と塑性変形領域を統一した形で,応力とひずみを測定することにより,高精度かつ安定した弾性係数の測定が可能となった.また,ホール素子を利用した応力測定磁気センサの開発を行い,曲げ変形中における応力分布の測定を行った. 塑性変形前後の弾性係数を測定した結果,塑性変形に伴い,弾性係数が20%ほど減少することが分かった.塑性ひずみの増加に伴うヤング率の減少をモデル化し,曲げ加工プロセスシミュレーションのスプリングバックを予測する構成式に適用し,スプリングバック予測を行った.実験値と比較した結果,曲げ角度に関して,従来より高い予測精度が得られた. 塑性変形が進行することに伴う弾性係数の低下現象のメカニズムを把握するために,変形による金属板材の内部でのマイクロ的な材料特性の変化等について計測・評価した.変形前と後の金属板材断面の結晶組織観察を行い,曲げ変形による結晶組織の変化を画像処理によって定量的に評価した.ナノインデンテーションを用いて結晶粒内での材料特性(ヤング率,硬さ)の分布を測定し,変形によるマイクロな材料特性の変化を評価した.塑性変形に伴い,結晶粒界付近において,弾性係数が局部的に低下することが分かった.この局部的な弾性係数の低下は全体のスプリングバック量の変化に大きく影響を及ぼすものと考えられる. 実機用金型を用いた曲げ加工に対応して,より加工条件の厳しい金型に対して有限要素法による解析を行い,シミュレーションデータベースの構築及び適応フィルターの設計を行って,実験との比較評価を行った.実機での実験データを用いて評価を行った結果,実験室レベルと同様に高精度な加工精度を得ることができた.
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