研究概要 |
本研究の目的は、DNAの電子伝達能力を利用して、界面で起こるハイブリダイゼーションを検出しうる手法を開発しようとするものである。そのためには、界面で起こる塩基対形成について調べる必要があり、さらにDNAを介した光誘起電子移動反応を詳細に検討する必要がある。 1)界面で起こる塩基対形成の研究 本研究では界面に固定化したDNAを取り扱うため、様々な界面での塩基対形成を調べる必要がある。アルキル化核酸塩基は気液界面で単分子膜を作り、膜表面で相補的な塩基対を形成することがわかった。(Mol.Cryst.Liq.Crys.,371,33-36(2001),Mol.Cryst.Liq.Crys.,371,379-382(2001))また、原子間力顕微鏡のプローブ先端に核酸塩基を固定化し、固体基板上に存在する核酸塩基との塩基対形成を水中にて力として計ることに成功した。(Mol.Cryst.Liq.Crys.,371,151-154(2001),Colloid and Surfaces A :Physicochem Eng.Aspects,198-200,677-682(2002))これらの結果より、気液界面、および固液界面においても、相補的な塩基対形成が起きることが示された。 2)DNAを介した電子移動測定 DNA上を電子が移動することを確認することが本研究で最も重要なことである。DNAからなるパターン化したフィルムを微小電極上に作製し、微小プローブ電極により導電性を測定した結果、導電性が観察された。(Mol.Cryst.Liq.Crys.,374,375-378(2001)) 3)塩基対のスタッキングを介した光誘起電子移動反応 電子ドナーと電子アクセプターをそれぞれ有する両親媒性化合物とDNAとのポリイオン複合単分子膜を気液界面に作製し、蛍光寿命からDNAを介した電子移動を測定した。その結果、1本鎖より2本鎖DNAの方がより電子移動を促進することがわかった。この結果より、光誘起電子移動反応によりハイブリダイゼーションを検出できることが示された。
|