研究概要 |
当該研究は,強い赤外線レーザーを物質に当てて発生する二次非線形光(SHG)を用いて,物質の構造を研究する新しい機器,二次非線形光学顕微鏡(SHGM)を開発することを目標にしてきた。具体的にはパルスYAGレーザー(波長1064nmの赤外線)を光源にして,対象物から発生する波長532nmのSHG可視光で構造を観察する。SHGは,中心対称のある物体からは発生しないので,観察の対象は,液体あるいは固体の表面に存在する,厚さ数ナノメートル以下の分子超薄膜の構造である。入射角度を固体あるいは液体のブルースター角に調整することにより,光源の強いパルスレーザーはすべて表面を通り抜け反射しないため,弱いSHGを感度よく検出できた。そのため,光源のパルスレーザーの発光部および顕微鏡は角度の微調整のできるゴニオメーターにとりつけるとともに,顕微鏡には高感度CCDカメラをそなえた。また検出光路には検光子をそなえ,その角度の回転調整できるようにした。なお,可視光によるブルースター角顕微鏡を同時に使えるようにするため,光源の出力部に移動可能なミラーをそかえ,このミラーの切り替えによって赤外線レーザー光を非線形光学素子結晶にもどし、これにより発生した532nmの可視光を用いて,対象物の同じ部分を可視光ブルースター角顕微鏡(BAM)で観察できる機能をそなえた。また将来的には,垂直方向から観察できる高倍率顕微鏡と高感度CCDカメラをもう一つ用意し,蛍光顕微鏡としても単分子膜を同時に観察できるように拡張して,分子膜の構造研究の多目的顕微鏡に発展させる予定である。
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