研究概要 |
発達したπ共役系を主鎖骨格とし、その非ケクレ位側鎖に安定ラジカルを共役して結合させた純有機の「多スピン共役高分子」を対象に、その巨大な分子磁気モーメントによって誘起されるナノメートルスケールでの磁気応答を、分子磁気ドット像としてはじめて定量的に観測することを目的とした。分子レベルで働く磁気相互作用を、高分子内でのスピン密度と多重度をパラメータとして描像し、ナノサイズで磁気応答するはじめての有機材料として特徴づけた。 (1)物性測定に供する試料として、直鎖状のポリ[4-(2,6-ジ-t-ブチルフェノキシル)またはジ(p-メトキシフェニル)アミニウム-1,2-フェニレンビニレン]、同星型体および架橋拡張体ほか、ポリ(N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ-4-イル)-2-メチルアクリルアミド)を量合成した。 (2)磁気力顕微鏡による分子磁気ドットとしての画像化を進め、原子間力顕微鏡像と対比させながら、分子形状を確定するとともに、磁性探針の磁化方向によるポジネガ反転、分子量(径)の大小およびラジカル発生率(スピン濃度)の増減に対応した分子像の巾および像の凹凸度を明示した。 (3)高分子鎖間で反強磁性に働く空間を介しての相互作用を温度依存性、高分子濃度、希釈剤の影響などから抽出して観測した。高分子鎖間での新しい相互作用として把え、静電引力による高分子コンプレックス生成と対比させながら、相互作用を解明した。 (4)MFM磁気応答する有機物質の適用範囲を拡張するため室温長寿命ラジカルニトロキシドをもつポリメタクリレートのナノ粒子、また参照として希土ガドリニウムイオンを保持したポリメタクリル酸のナノ粒子を作製し、多スピン共役高分子での磁気応答の特性を明らかにした。 以上より、純有機物質による高密度かつ多値表現可能な磁気記録材料の実現に向けて道筋をまとめた。
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