研究概要 |
植物電気生理学分野は,近年に創られたもので完成された学問分野として認知されてなく,実用面ではとについたばかりである。一方,最近,飛躍的にのびている果菜類接ぎ木苗の需要に対して,接ぎ木ロボットを一端とした苗生産の自動システムが開発されつつあり,食糧問題や環境問題を考慮した植物工場の考え方とともに,植物生産システムの高度化が注目されている。このような背景のもとで,植物の生体情報計測は,顕在化する以前に予測可能となりうる微妙な信号を非侵襲に行われる必要があり,生体電位は非常に有用である。本研究で扱う生理は接ぎ木の活着程度で,本研究の目的は生体電位計測を利用した果菜類接ぎ木苗の活着・順化装置の開発である。 平成12年度 初年度は,生体電位を計測するための環境制御箱,生体電位計測のプローブ,アンプ,A/D変換,コンピュータによる記録等の電気回路系の設計・製作・検定を行い,生体電位計測システムを構築した。 平成13年度 次年度は,接ぎ木苗の生体電位計測による情報化を試みた。供試材料は,接ぎ木適期に断根挿し接ぎしたトマト苗である。接ぎ木接合部における活着程度に応じて,断根した台木の不定根形成が促進すると考えた。測定項目は,不定根の本数と長さ,台木の茎表面と根系を含む培地間の電位差である。なお,培地には,ピートモス,バーミキュライト,水のみの三種類を用意した。電極は,台木の茎軸に+極を固定し,グランド極は培地内に接地した。電極を付けた苗は,環境制御箱内に移し,暗期と明期を1分ごとに電位計測した。電位計測の結果,暗期よりも明期の電位振幅が大きくなる傾向が認められた。不定根の発達と電位との相関係数を,総根長と本数,計測期間,培地別に求めた結果から,計測期間では初期の方が,培地ではバーミキュライトと水のみが,相関係数が大きくなった。
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