研究概要 |
受容体,酵素,イオンチャネルなどの生体にとって機能的に重要な蛋白質を,発現系を用いた方法により,確立した細胞系に導入して発現させ,細胞モデルを作製し,神経伝達物質,電位依存性イオンチャネル,細胞増殖因子等による細胞刺激により,発現蛋白質の動態を解析することで,薬物の効果判定や創薬の開発に役立つ系を確立することができる。本研究では,とくに,細胞内カルシウムイオン(Ca^<2+>)に焦点を合わせた。 CaMKIIの細胞質と細胞核にそれぞれ局在する細胞質型と核移行型をNG108-15細胞に発現させ,脳由来神経栄養因子(BDNF)発現に対する影響を調べた。細胞質型CaMKIIδ1,CaMKIIδ2の発現によっては,BDNFの発現は不変であったが,核移行シグナルを持つCaMKIIδ3,CaMKIIαBの発現によって,細胞質でのBDNFの発現が増加した。定量的RT-PCR法によってmRNAを測定すると,Exon IV-BDNF mRNAが有意に増加し,ExonIII-BDNF mRNAの増加を認めなかった。これらの結果は核移行シグナルを持つCaMKIIのみがmRNA,蛋白質の発現にかかわっていることを示している。 ドーパミンD2受容体(D2R)長鎖(D2RL)と短鎖(D2RS)をNG108-15細胞に導入し,それぞれ安定細胞を得た。D2RLおよびD2RSの細胞内局在を,D2Rに対する特異的抗体を作製して,共焦点レーザー顕微鏡を用いて調べた。両者の細胞内局在は異なっていた。また,D2RL発現安定細胞を用い,D2R作動薬に対する細胞内反応を調べた。D2R刺激によって,細胞内Ca^<2+>濃度が上昇した。細胞に核移行型CaMKIIイソフォームを発現させ,D2R作動薬で刺激すると,CaMKII活性化反応および脳由来神経栄養因子の発現が上昇した。
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