研究課題/領域番号 |
12557125
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
整形外科学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩本 幸英 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00213322)
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研究分担者 |
田仲 和宏 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (10274458)
小田 義直 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (70291515)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
12,800千円 (直接経費: 12,800千円)
2002年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2001年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2000年度: 7,400千円 (直接経費: 7,400千円)
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キーワード | 悪性骨軟部腫瘍 / 転移 / 基底膜浸潤 / 細胞骨格 / シグナル伝達 / 骨破壊 / VEGF / 骨肉腫 |
研究概要 |
悪性骨軟部腫瘍患者の死因のほとんどは転移であり、その制御法の確立は社会的急務である。転移に際し腫瘍細胞は、二度にわたり血管内皮細胞下の基底膜を浸潤、破壊するが、この基底膜浸潤は転移成立の多段階プロセスのなかで最も重要なステップと考えられている。我々は、この基底膜浸潤のモデルであるinvasion assayを世界に先駆け開発し、基底膜浸潤の分子機構を解析し、その抑制法の開発に向けた研究を推進してきた。その結果、悪性腫瘍細胞の基底膜への接着、酵素的破壊、運動に関与する遺伝子は、接着分子や細胞骨格関連分子からのシグナル伝達により発現が一挙に変化し、浸潤、転移を惹起している可能性が示唆された。一方、近年、Rhoファミリー、インテグリンという浸潤、転移に関与する2つの主要な分子が注目され、その下流のシグナル伝達経路の解析が進んでいるが、両者の相互関係は全く明らかにされていない。今回の研究の目的は、インテグリンとRhoのシグナル伝達経路とクロストークの詳細な検討を行い、その経路の中で細胞の転移形質を一度に抑制しうる最も重要な因子を分子標的とし同定すること、その分子標的に対する有効な抑制法を検討し、悪性骨軟部腫瘍の浸潤、転移の新しい治療法の開発につなげること、である。我々は、細胞内cAMP濃度を上昇させることでヒト線維肉腫細胞HT1080の浸潤、転移が抑制できることを見いだしている。この現象の分子機構を詳細に検討すると、cAMP誘導体によってPKAを介してRho活性化が抑制され、アクチンストレスファイバー形成の抑制を引き起こし、さらにFAKのリン酸化も抑制し、細胞形態を変化させるとともに浸潤能を低下させることが判明した。浸潤を規定する細胞運動能にはFAKリン酸化が重要であったが、接着や酵素的破壊に関してはFAKリン酸化の影響は少なかった。以上より、リン酸化FAKが細胞形態と運動能の制御に深く関与していることが明らかとなった。また、悪性組織性組織球腫の臨床サンプルにおいて、FAKリン酸化と腫瘍再発に関連がある可能性を見いだした。さらに腫瘍性骨破壊において、強力な血管新生因子であるVEGFからのシグナルが重要な役割を果たしており、この伝達経路を阻害することで、骨転移や骨破壊が制御できる可能性が示唆された。
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