研究分担者 |
岸 幹二 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30033202)
鈴木 康司 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (30304322)
窪木 拓男 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (00225195)
若狭 亨 岡山大学, 歯学部附属病院, 講師 (50191713)
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研究概要 |
主目的である正常者における習慣的咀嚼運動が脳のどの部位の活性化にもたらす影響については,MRIの撮影手法上,咀嚼は運動によるアーチファクトが大きく,信頼性、再現性の高い撮影を行うことが困難であった.したがって,嚥下運動時の大脳皮質活性部位の検索をfunctional MRIを用いて評価した.その結果,嚥下によって中心前回ならびに中心後回が活性化されることがあきらかとなった.主課題の実験に並行し,MRI(T2強調画像)を用いて8名の正常男性における30秒間の最大噛みしめ時の咬筋内信号強度を測定した.その結果,咬筋内T2信号強度は噛みしめ時に減少し,噛みしめ終了後に噛みしめ前ベースラインを越えて増大した.同じ被験者について同条件で近赤外線分光計を用いて咬筋内血流動態を測定したところ,本装置で測定した咬筋内筋組織内血流動態は,T2信号強度変化と非常に類似した反応を示した(Pearon's r=0.945,P<0.0001).また,交感神経活動増大時の筋組織内T2信号強度変化を測定するため,15名の正常男性を対象として,僧帽筋での信号強度変化を測定した.交感神経活動の増大にはCold Pressor Test (CPT)を用いた.その結果,CPT付加時には僧帽筋内T2信号強度は有意に増大し,付加終了後ベースラインに収束した.この結果は,以前我々が近赤外線分光計を用いて測定したCPT付加時の僧帽筋内血流動態反応と非常に類似していた.以上の筋活動状態ならびに非活動時の筋組織内血流動態変化測定の結果より,筋組織内血流動態はMRIT2強調画像の信号強度を測定することにより,非侵襲的かつ簡便に測定できることが明らかとなった.本結果は,筋組織内血流動態異常がその病態に関与していると推測される慢性筋痛の病態解明にMRIが使用できる可能性を示す所見であると思われる.
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