研究概要 |
オッセオインテグレーションの獲得と維持はインプラント治療の成功の前提条件であり,骨質はそのための重要な因子とされている。とりわけ,皮質骨の支持が十分でない部位においてはオッセオインテグレーションの獲得に海綿骨の骨質がその成否を担うとされ,それゆえインプラント治療前に海綿骨の骨質を十分に把握することはきわめて大切であると考えられる。 現在行われているインプラント治療の術前の海綿骨の骨質診断は,骨量については定量的評価が可能なものの臨床に容易に用いることはできないこと,骨梁構造については定量的もしくはそれに代わる有効な定性的評価が完成できていないことなどを示している。そのため,海綿骨の骨質とインプラント治療の予後の対応に関しても定量的に評価できない問題が生じている。そこで,術前診査において海綿骨骨質を十分に把握するためには,骨量と骨梁構造の両面から簡便に評価を行える方法が待ち望まれる。 本研究では,口内法X線写真を用いた海綿骨の定量的骨質評価の可能性を明らかにすることを目的として,装置の普及度や被曝量などの観点から単純X線写真を用いる方法に着目し,これを骨質評価に用いることはできないかと考えた。 橈骨などで骨粗鬆症の診断に応用されている単純X線写真を画像解析しノイズを除去する方法を採用しようとしたが,その評価パラメータと骨量および骨梁構造との関係についてはまったく明らかにされていない。インプラント治療では埋入予定部位の海綿骨の骨質を十分に把握しなければならないため,全身的な骨の状態を把握することを目的とする骨粗鬆症の診断とは異なり,それら評価パラメータと撮影対象となる骨との関係を明確にする必要がある。そこで本研究では,下顎骨の骨量と骨梁構造について,口内法X線写真の画像解析結果とCTによる骨量およびμCTによる骨梁構造とを主として形態計測学的立場から比較検討した。
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