研究概要 |
本研究は,現在まで嚥下障害の診断に用いられているVideofluorography(VF)法にかわり,嚥下にかかわる舌運動,頚部運動,喉頭挙上運動を利用して嚥下機能を非侵襲的に計測評価でき,VF法の及ばない在宅・訪問診療などでの利用に実際的なポータブルの嚥下機能評価システムを開発することを目的とした。 歪ゲージ式圧力センサーを舌圧計測に,圧電式加速度センサーを喉頭運動計測に用いるポータブル嚥下機能評価システムを試作した。これにより成人被験者30名の嚥下検査を行い,中心間距離20mmで口蓋正中部に設置した前後2個の舌圧センサーの出力発生時の時間差T1と喉頭運動との時間差T2および各圧力の最大値を求めた。水10ml嚥下時のT1は190±101ms, T2は437±162msとなった。さらに,同意の得られた被験者26名についてVideofluorography(VF)法による嚥下造影検査を行い,10倍希釈バリウム溶液10ml嚥下時の,嚥下開始から食塊の最後方部が下顎下縁を通過するまでの時間(VFT1)とT1との間に有意な正の相関関係を認めた(Spearmanの順位相関係数:rs=0.494,P=0.0134)。 以上の結果より,従来VF法によってのみ測定評価が可能であったパラメータを今回開発したシステムを用いる嚥下機能評価によっても推定できる可能性が明らかとなった。さらに従来行われていない嚥下時の舌圧の計測など,本システムが嚥下機能・嚥下障害の解明と適切な機能診断の確立に有用なツールとして役立つことが示された。
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