研究概要 |
結晶系の太陽電池出力は日射量だけでなく電池の温度に大きく依存し,電池温度が高ければ出力は落ち,低ければ高くなる.電池の温度は日射量,気温、風速の影響を受ける.特に外気温の影響は大きく,夏期の電池温度は60℃以上になり,せっかく日射量が大きくても出力はそれほど大きくならない.これらを考慮し夏期において外気温の高い時は,太陽電池を冷却することで,出力の上昇が見込める.そこで太陽電池の温度が上昇した場合,何らかの方法で電池を冷却してやれば効率は大きくなり,年間の発生電力も大きくなる. 本研究では,最終的に太陽光発電システムの効率化を既存の太陽電池,特に今後,最も普及が期待される一般家庭用太陽電池に,比較的簡単な冷却装置を低コストで設置することで実現することを目指している.ここでは,屋根の面積や形状に柔軟に対応できるように太陽電池モジュール単位で設置が可能な冷却装置の開発に向けて3種類の冷却装置を試作した.その結果最終的に,建物の高低差によるサイホン作用を利用して,外部動力を必要としない,構造が簡素で冷却効率の高い冷却装置を開発した.その冷却装置を設置した太陽光発電システムで長期計測運転を行った結果,太陽電池を冷却することで発電量も増加するが,電池冷却で得られた温水で節約できるエネルギー量の方がはるかに大きいことがわかった.特に,屋根直置き型の太陽電池は、架台設置型と比較して太陽電池の温度上昇による夏期の性能低下が著しいため,夏期において屋根直置き型の太陽電池を冷却すれば、架台設置型と比較して、発電量の増加量ならびに電池で得られる温水で節約できるエネルギー量はいずれも2倍程度の増加が期待できることがわかった.また,夏期においては太陽電池の冷却で得られた温水の再利用により,光熱費を大幅に節約できる可能性を示唆した.
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