配分額 *注記 |
10,300千円 (直接経費: 10,300千円)
2002年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2001年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2000年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
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研究概要 |
モンゴル草原の植物群集に及ぼす気候条件と遊牧の影響を明らかにし,草原の生産力と遊牧の形態との関係を明らかにすることを目的に研究を行った.モンゴル草原の生産力は,北から南にかける降水量の勾配を沿って減少する傾向がある.全体的に見ると草原の生産力は降水量と正の相関がある.モンゴル草原は乾燥,寒冷と貧栄養により,草原の水利用効率と光利用効率が世界の平均値より低いこと,乾燥の進行につれ植物の生産力は気候の年々変動と遊牧による影響に敏感な応答を示す傾向があることを明らかにした.また,植物生産力と強く関連する群落の面積指数,種多様性にも同様な傾向があることを示した.一方,比較的湿潤な気候と長年にわたって強い採食圧を経験してきた草原は生産力と群落の種多様性が高く,気候の年々変動と遊牧に対する耐性が強く,群落の安定性が高い.草原の生産力と遊牧の形態の関係に関して,人口が密集した都会に隣接する草原では,草原の生産力と市場の両方に依存した定住型の牧畜を営まれている.乾燥気候では,もともと低い生産力が気候の年々変動の影響を受ける一方,他行政区住民の越境放牧活動により,草原の退化を招き,草原の利用をめぐるトラブルを引き起こしている.また,乾燥草原の調査地では,生産力の高い典型草原の住民と同じ数の家畜を持ちながら,放牧するための年間移動距離が典型草原の住民と同程度であったことが,草原の退化を引き起こすもうひとつの原因であると結論した.乾燥気候のモンゴル草原では,遊牧は適切に営まれれば,草地資源の持続的利用を可能にする生産様式である.広大な面積の自然草地を持つモンゴルでは,遊牧の存続と変容はこの地域の植生に決定的な影響をもつことを明らかにした.
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