研究概要 |
近年明らかにされた種分類とその方法を応用して,病原性赤痢アミーバとヒト・クリプトスポリジウムの本来の流行様式を明らかにするため,これら原虫種が通常の生活の中に認められるフィリピン,ネパール両国を対象に疫学調査を行った.結果 1.赤痢アメーバの病原性種(Entamoeba histolytica)および非病原性種(E. dispar)はすべての調査地域に混在するが,E. h.の占める割合いは10-30%と地域により異なる. 2.赤痢アメーバシスト保有率の高い地区は,密集して生活する居住環境を示し,ヒトとヒトの直接的接触が最も高い伝染危険因子であると考えられる.これはE. h.のみについても同様である. 3.E. h.,E. d.ともに保有率(無症候感染)のピークは5-20才の若年者にみられ性差はないが,重症々候感染(肝膿瘍)は20-60才男子に80%以上が集中する. 4.E. h.に対する抗体保有率も若年層にピークを示し,一般的E. h.感染は長期持続しないことが想定される. 5.クリプトスポリジウム感染状況も抗体陽性者から見る限り赤痢アメーバに酷似する. 6.クリプトスポリジウムには無症性保有者が認められず,どのようにして伝染が継続,維持されているのか不明である. 7.回虫,ランブル鞭毛虫など,上記2原虫より頻繁に認められる寄生虫は異なる伝染様式を持つことが予想された. これらの結果は赤痢アメーバ,クリプトスポリジウムのコントロール対策は上水道やトイレの改良だけでは困難なことを示す.
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