研究概要 |
長年にわたって科学研究費の交付を受けて継続してきた「ヒポクラテス集成」Corpus Hippocraticumを中心とする古代ギリシア医学文献の研究に山梨大学定年退官の時を迎えて,一区切りをつけることができた。ミアスマ(汚染)の観念を,ギリシア悲劇におけるパトリギア(病理学・愛〓〓)の問題として倫理思想上的に考案した前回の研究課題「ミアスマ・パトロギア」を継承してギリシア社会のエートスの中でとり上げた論文が「ミアスマをめぐって」(補遣)である。これは2001年9月,青山学院大学で開催されたギリシア哲学研究セミナーでの研究発表に手を入れたものである。トゥキュディデスとの対比,ソクラテス以前の自覚哲学との関係からプラトン・アリストテレスを経てヘレニズム哲学までエートス論として一通りの見通しをつけることができた。 「ヒポクラテス研究」補遺は,研究成果報告書のために書き下ろしたもので,これまでの私の一連の研究をエートス論という視点からとりまとめた。内容としては1.プラトン哲学とヒポクラテス医学,2.「ヒポクラテス集成の諸問題,すなわち(1)医師の義務論(2)〓グトシス(3)メトロン〓自己哲学と医学(1)図式性(2)ディアイタ4.トゥキュディデスとヒポクラテス5.ミアスマ論の展開と分岐にわたるもので,わたしのような才に乏しいものが,とにもかくにもたどりついた研究の経緯である。
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