平成12年度は、現在出版されている関連図書と並んで、特にフランス啓蒙期に出版された女性に関する自然誌的・道徳的諸文献や女子教育に関する文献等をマイクロフィルムを活用して多数収集した。初年度として、これら資料の整理に当たるとともに、フランス啓蒙期のジェンダーに関わる諸思想を検討したが、とりわけシャトレ夫人、デピネ夫人、コンドルセ夫人など、同時期に活躍した女性思想家たちの動向を調査した。 平成13年度は、前年度に行なった女性思想家たちの動向の調査を続行するとともに、対極的な立場を取ったルソー、コンドルセを中心に、同時期のディドロ等のジェンダー思想に対する分析を行なった。 ルソーに関しては、教育論『エミール』の女性教育の項をはじめとする彼の議論を検討し、性別身体の二元論の生成期においてルソーが時代の思潮の中で、自由と平等の両立可能な社会の原理を構想する一方で、いかに男女の補完的機能に関し立論したかを跡付けた。 コンドルセに関しては、革命期におけるコンドルセの言説を検討し、コンドルセが女性と男性の平等を説いて、女性の市民権付与に向けて論陣を張る一方で、性差に関わらない公教育の推進を唱えるなど、革命の理念である人間の平等という原理に最も忠実な論者であったことを確かめた。 これらの研究成果は、まだ公表するに至っていないが、平成12年度に、現代哲学・倫理学の分野としてジェンダーに関わる問題領域の重要性を論じた論考を発表し、学会報告を行なった他、本年度作成した研究報告書を基にして、研究成果を学術論文にまとめて発表すべく準備中である。
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