研究課題/領域番号 |
12610056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
美学(含芸術諸学)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
青木 孝夫 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40192455)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2002年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2001年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2000年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 美学 / 芸術 / 芸能 / ハビトス / 芸術教育 / 近代化 / 江戸 / 感性 / 芸道 / 遊芸 / 能楽 / 隠者 |
研究概要 |
明治期以降の近代藝術観の移植を通し、或いは西欧の美学や藝術観の影響の下に忘却され、覆われた江戸期の美学や藝術観の伝統の意義とその近代的変更に纏わる諸問題を解明した。 従来、江戸ひいては日本の美学研究は本居宣長らの国学系や芭蕉らが代表する隠者系、すなわち政治や道徳の軛を離脱し美的文化の自律性を尊重する思想傾向に片寄っていた。しかし、江戸の「藝術」は<美>よりも<教養>や<共同体の伝統>と結びついていた。 儒教的文化のヒエラルヒーでは、第一に「道」という政治・道徳の理念が尊重され、第二にその実施にあたる政治家・官僚としての武士の人間性を陶冶する古典的身心文化が「藝術」とされる。藝術は共同体の維持に関わる公共的伝統なのである。この公共性の保持と対照的な私的享楽の文化的営為が「遊藝」である。その社会的領域は時に「悪所」で代表される。この文化の三範疇化は武士のみならず農工商の三民に於いても認められる思想と制度の基本枠である。 江戸の儒学は、この枠組を前提に、しかし、人間本性の探究の中から、美を個人の主観的な体験と関連させるだけでなく社会の風俗や道徳や礼儀、また階層性や勤勉と関連させる考え方を展開した。美的自律性に藝術の固有性を絞り込むのではなく、社会に於ける藝術の意味や機能に注目し、<楽>や<仁>の観念を核に豊かな美学的省察が展開されていたことを解明した。 その結果、江戸の伝統は近代に入り、公的教育の場面ではなく、私的教養たる藝道や藝能として展開した。以上を通して、現代に於ける美学や藝術研究の枠組み設定そのものの生産的な見直しを行なった。
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