研究概要 |
今年度は注意欠陥多動(ADHD)児の行動的早期診断にMazurの手法を応用するため,大学生20名以上を用いて手法の実証的検討を行なうと同時に,比較検討のための統制条件のデータを収集した.また,強化スケジュールをADHD児に適用する場合,強化スケジュール自体の嫌悪的な性質が,課題から逸脱した行動や攻撃的な行動を誘導する可能性を考え,強化スケジュールと攻撃性の関係および強化スケジュールの嫌悪性の問題を実験により検討した.これらの成果を踏まえ,ADHD傾向のある者を対象にMazurの手法による遅延強化選択実験を行ない,一般の大学生との比較を行なった.現時点でADHD児のデータは少数であるが,今後も継続して研究を実施する予定である. 特に強化スケジュールの嫌悪性に関する研究では,シドマン型回避における回避・逃避反応の頻度と強度を指標として正の強化と負の強化の2種類の強化スケジュールの効果を測定した.実験では参加者を変時隔(VI)と消去の混合スケジュールで強化されるコンピュータ・ゲームに従事させ,同時に嫌悪的な騒音をシドマン型回避スケジュールにより回避・逃避させ,回避・逃避反応の頻度と強度を測定した.個人差は見られたものの,回避・逃避反応の頻度・強度ともに正の強化スケジュールよりも負の強化スケジュールで高く,負の強化スケジュールが個体に及ぼす情動的な効果を明らかにすることができた.
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