研究概要 |
本研究では,暴力的テレビゲームが攻撃行動に及ぼす影響に関する実験的検討と,攻撃表出を左右する重要な要因としての怒り感情のコントロールに関する基礎的検討を行い,その成果を3章からなる報告書としてまとめた.まず,第1章「暴力的テレビゲームと攻撃-ゲームの種類および参加性の効果」(研究1,2)では,ゲームの形態(刺激反応性vs.役割同化性)と印象(娯楽性VS.暴力性)の面から暴力的ゲームを分類・選択し,攻撃行動に及ぼす影響について実験を行った.この際,ゲーム画面を観察する条件とゲームをプレイする条件に分け,参加性の効果についても検討した.その結果,観察からプレイへとゲームへの関与の度合いが深まることで,娯楽性の高い役割同化型ゲームにおいて攻撃行動は促進され,逆に,暴力性の高い役割同化型ゲームにおいて攻撃行動は抑制された.次に,第2章「怒り経験とその鎮静化過程(1)-感情と行動に関する基礎的検討-(研究3,4)でに,過去に経験した強い怒り経験を具体的に記述させ,その時の怒り対象,生じた感情,怒り緩和行動,について具体的に記述させた.分析の結果,怒り経験時には<怒り>の他に<抑うつ>および<驚愕>といった感情が生じること,怒り感情に対処するために取る行動(怒り緩和行動)として,<論理的解決(合理化・原因究明・冷静視・客観視)><感情表出(攻撃行動・社会的共有・物への転嫁)><思考回避(気分転換・忘却)>の9行動(3カテゴリ)が抽出された.これに基づき,続く第3章「怒り経験とその鎮静化過程(2-感情・認知・行動の時系列的変化とその関連性-」(研究5)でほ,怒り経験時の感情・認知・行動が相互にどのような関係にあるのか,その時系列的変化も含めて検討した.その結果,直後は感情的要素(怒り)が行動(感情表出)へと,2〜3日後は認知的要素(肥大化など)が行動へと顕著結びついていること明らかとなった.
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