研究概要 |
カウンセリング逐語記録の分析は,Rogers(1942)以来,科学研究上はもちろんのこと,養成訓練のうえでも重要なことと認識されてきた。にもかかわらず,近年はさまざまな制約(守秘義務等)から十分に行われていないのが現状である。そこで,本研究では,故・佐治守夫東京大学名誉教授が遺されたカウンセリング・テープに基づいて,逐語記録によるカウンセリングプロセスの研究に取り組んだ。 本研究で作成,使用したデータは以下の3種類からなる。 A;テープから作成したカウンセリング逐語記録(守秘義務から報告書には載せていない)。B;Aに加えてカウンセラーの内省が記されているもの(報告書資料1)。C: A, Bに加えてケース全体の記録が記されているもの(報告書資料2,3及び出版されている「ゆう子のケース」など)。 これらのデータに基づき,以下3点から分析・検討を行った。 1.上記Aに基づき,pre-therapy(Prouty,1994)という観点を導入して,「(感情の)反射(reflection)」について技法論的に検討し,新たな方向性を示唆した(報告書論文2)。 2.上記Bに基づき,カウンセリングプロセスに影響を与える基盤としてのカウンセラーの基本的態度の検討を行い,Rogersのいう3条件のうち純粋性の重要性を確認した(報告書論文3)。 3.上記Cに基づき,大きな枠組みとしてカウンセリングプロセスに直接的な影響をもつ,カウンセラーによる治療構造の組立てを取り上げ,治療選択という観点を含めて検討した(報告書論文1)。
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