研究概要 |
本研究は、現代青年の政治不信の構造と特徴,政治不信に影響する要因や政治不信の結果として生ずる心理・行為傾向との関連性について検討することを目的としている.これまで政治不信の測定尺度の開発(調査I),人口統計学変数から見た青年の政治不信の特徴(調査II),政治的関心,知識,政治的有効性感覚(調査III-1)や,私生活中心主義傾向および社会的未熟の認知との関連(調査III-2),さらに政治不信と政治離れ状態や政治的態度・行動傾向との間の結びつきの様相について検討してきた(調査IV).その結果,以下のことが明らかにされた.1.現代青年の政治不信は"政治過程の不透明性"と"担い手の反役割行動"と命名される2つの因子から構成されている.2.年齢・性別を問わずどちらの得点もかなり高い方に傾き,現代青年は強い政治不信を感じている.3.政治不信は既成政党に対する非好意的評価や投票意志が低いこと,政治的有効性感覚が低いことと結びついている.4."政治過程の不透明性"に対しては,政治的関心の高さおよび社会からの撤退志向が少ないことが有意な影響を与えている.5."担い手の反役割行動"に対しては,私生活中心主義傾向が強いことが有意な影響を与えている.6.政治との主観的距離感の大きさおよび国政選挙での投票意志に対しては政治不信の影響は見られない.7.政治との主観的距離感には政治的関心と政治的有効性感覚が有意な正の影響を与え,国政選挙での投票意志に対しては政治的関心が正の有意な影響を与えている.以上の結果に基づいて,現代青年の行動・心理的特徴を心理的背景要因,政治的有効性感覚や政治的コンピテンスを個人的資源要因,政治的関心や知識を政治関連要因として,これら各要因の複合的な結合によって青年の政治不信を説明するモデルが考案され,政治不信と政治的行動様式との間の関連性の実証的検討が今後の課題として提示された.
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